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脊髄損傷者のリハビリテーション 機能障害と合併症

こんにちは。作業療法士Sです。

前回の記事では総論、脊髄損傷の診断・評価方法などについて書きました。

今回は脊髄損傷者の機能障害と合併症、自己管理方法を中心に書いていこうと思います。

目次

機能障害と合併症

脊髄損傷者の機能障害と合併症を挙げると、以下のような項目になります。

機能障害
  • 運動機能障害
  • 感覚障害
  • 膀胱直腸障害
  • 自律神経障害
  • 性機能障害
合併症
  • 起立性低血圧
  • 自律神経過反射
  • 体温調節障害、発汗障害
  • 褥瘡
  • 排尿・排便障害
  • 膀胱結石
  • 異所性骨化
  • 疼痛
  • 呼吸機能障害、肺炎
  • 痙縮
作業療法士S

太字の項目に関して、詳しく書いていきます!

自律神経障害

自律神経

自律神経
作業療法士S

左が交感神経系、右が副交感神経系です。
互いにアクセルとブレーキの関係性となっています。

起立性低血圧

起立性低血圧
起立性低血圧

腹部内臓器(血液のプール)の血管収縮機能の障害によって生じる

作業療法士S

T5レベル以上の脊髄損傷者に生じやすいです。

起立性低血圧の対応法

起立性低血圧対応法①
起立性低血圧対応法②
作業療法士S

一過性脳虚血発作(TIA)を防ぐために、頭の位置を心臓と同じ高さ・より低くする対応をします。

自律神経過反射

自律神経過反射
作業療法士S

T5〜6レベル以上の脊髄損傷者に生じやすいです。

体温調節障害、発汗障害

放熱面

・交感神経系支配の発汗機能障害

・夏季のうつ熱

産熱面

・基礎代謝の低下

・食物摂取量の低下

作業療法士S

放熱面は冷房設備等、環境面からも調整していきましょう。
(訓練場面では冬でも扇風機を使うことも!)

褥瘡

褥瘡①
褥瘡②
作業療法士S

褥瘡は姿勢によって好発部位があります。
詳しくはこちらをご覧ください。

対応方法

エアークッションの使用
車いす上での除圧動作
褥瘡を予防するために…
  • 中途半端な座位をとらない
  • ギャッジアップ(背上げ)をした後に前屈して臀部のしわをとる
  • ギャッジダウン後も除圧をする(側臥位になる 等)
  • 排泄をコントロール、可能であればオムツを外す(ムレ防止)

排尿・排便障害

排尿・排便の管理は脊髄損傷者様、またそのご家族にとってのQOLに大きな影響を与える項目のため、詳しくみていく必要があります。

排尿管理

排尿管理方法
  • 尿集器(尿バッグ、レッグバックなど)
  • 自己導尿(CIC)
  • 膀胱瘻
作業療法士S

経過の長い患者様は手圧・叩打法も行っていたようですが、膀胱変形などの影響があるのでオススメはしていません…💦

膀胱結石

膀胱結石
作業療法士S

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)で体に傷をつけることなく結石を砕くこともできますが、大きさによっては手術で取り出すこともあるので注意しましょう…!

排便管理

排便管理方法
  • 規則正しい食生活
  • 飲水の習慣
  • 食物繊維の多い食物を摂る
  • 定期的排便(隔日、2日おき 等)
  • 下剤・座薬・摘便・残便確認
  • 側臥位でのビニール排便
  • トイレ排便
作業療法士S

脊髄損傷者様や介護者にとって、負担の少ない方法を選択しましょう。

トイレ排便の課題

課題
  • 長時間の座位保持
  • 座位での血圧低下
  • 排便時の血圧低下

異所性骨化

異所性骨化
異所性骨化
  • 通常では考えられない部位に骨化が生じる減少
  • 16〜53%に認める
  • 股・膝・肘・肩の順番に多い
  • ADLに支障をきたす場合、褥瘡の原因となる場合は手術対応

疼痛

脊髄損傷部上方の痛み

・自律神経過反射に伴う頭痛

・対麻痺者の上肢痛(肩関節痛、手根管症候群)

・頸髄損傷、上位胸髄損傷者の消化器疾患に伴う肩への放散痛

脊髄損傷部の痛み

・脊柱の不安定性、損傷部の筋、骨格の痛み

・神経根、馬尾性疼痛

・境界領域の痛み

・肩手症候群

・手指の灼熱感

脊髄損傷部下方の痛み

・麻痺域の痛み

・内臓痛

呼吸機能障害

病態
  • 呼吸筋麻痺
  • 気道分泌物増加
  • 排痰能力低下
対応
  • 体位ドレナージ
  • 胸部叩打
  • 徒手的咳嗽介助
作業療法士S

脊髄損傷者の死因第一位は肺炎です。

痙縮

痙縮
痙縮の対応方法
  • リハビリテーション(装具療法、物理療法を含む)
  • 内服療法
  • 末梢神経ブロック、モーターポイントブロック
  • ボツリヌス毒素局注
  • 整形外科手術
  • 機能的脳神経外科(選択的後根切除、末梢神経縮小術)
  • 随腔内バクロフェン治療(ITB治療)

バクロフェン

バクロフェン
バクロフェン
  • 中枢神経抑制伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)と同様の働きがある
  • 脊髄の単シナプス反射、多シナプス反射を抑制し、抗痙縮作用を示す
  • 神経活動抑制により、疼痛の閾値が上昇する⇨疼痛作用がある
作業療法士S

バクロフェンは経口投与では髄液に移行しにくいため、バクロフェン髄注療法(ITB療法)を選択される患者様もいます。

自己管理

CHECK

・起立性低血圧の対応の仕方

・車いす乗車時間、座位保持時間の確保

・身体を動かす時間を設ける

排泄・褥瘡予防の自己管理

失禁時の対応、失禁原因の分析

・体位変換を身につける

作業療法士S

失禁時の対応、原因の分析として…
・一気に水分摂取をしていないか?
・コーヒー、酒など利尿作用のある飲み物を飲んでいないか?
・間食を摂りすぎていないか?
・油ものの多い食事を摂っていないか?
などを確認していきます。

まとめ

今回は脊髄損傷者の機能障害と合併症を中心に書いていきました。

合併症は多岐に渡りますが、予防するためには体位変換など、まずは身体を動かすことが大切です。

痛みや痺れ、痙縮が生じると身体を動かすのがつらいとは思われますが、悪循環に陥らないためにも、これらとうまく付き合っていく方法を模索していきましょう。

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