こんにちは。作業療法士Sです。
今回は、筋ジストロフィー児への作業療法について書いていこうと思います。
筋ジストロフィー児への作業療法
- 筋力の耐久性維持及び改善
- 関節可動域の維持及び改善
- 姿勢・運動の維持及び改善
- 代償手段の獲得(自助具・福祉用具の検討)
- 他児との遊びへの参加
- 学校生活への適応
これらの項目を検討していきましょう!
リスク管理
- 筋疲労に注意する
- 心臓への負荷量に注意する(電動車いす使用段階)
- リスク管理教育・指導面:疼痛、マッサージ、除圧(体位変換・除圧)
運動発達の特徴
- 進行性の筋力低下
- 徐々に各関節の固定性が失われていく
日常生活動作の各場面において、
①身体を適切な肢位に保持すること
②機能的肢位をいかに作りだすこと
が重要になります。
発達段階の変化
- 遅れながらも、歩行能力を獲得していく段階
- 徐々に運動機能障害が著しくなり、最終的にベッド生活の段階
段階に応じて、アプローチ方法が変わっていきます。
発達の流れ
筋ジストロフィー児の大まかな発達の流れです。
- 1歳5ヶ月〜
-
・歩行開始
- 3歳〜4歳頃
-
・両親が異常に気づき、病院受診
・「ふくらはぎが腫れた様に膨らみすぎて、なんとなく変」 ⇨ 下腿三頭筋の仮性肥大
・「最近転びやすくなった」「歩き方がぎこちない」 ⇨ 歩きづらさの出現
・「両下肢を広く開き腹部を突出し上半身を左右に揺らしながら歩くようになった」 ⇨ 動揺性歩行の出現
- 4歳〜5歳頃
-
・症状が軽快したように見える時期
- 8歳頃
-
・階段昇降不能
- 9歳〜13歳頃
-
・歩行困難(〜11歳)、装具の使用により13歳頃まで歩行可能
- 15歳頃〜
-
・座位保持不能、呼吸不全や心不全を併発し、18歳頃に亡くなる
座位
床・椅子座位、車いすの使用を検討していきます。
床での座位・椅子座位
座位保持をするために、以下のことを検討していきましょう。
- ベルト(体幹・骨盤)
- 台
- 肘かけ
- 背もたれ
洋式生活よりも和式生活の方が生活しやすい方が多いです。
座椅子やちゃぶ台テーブル、胡座座位の方が楽な場合があります。
車いす
車いすは移動する上で大切な道具です。
- シートは伸びにくいもの、滑りにくいもの、硬めのものを使用する
- 安全ベルトの工夫が必要
- 車いすを駆動することによって、脊柱の変形が強まる可能性がある時に適応時期を検討する
電動車いす
広範囲の移動が可能になり、便利だが操作には十分な練習が必要です。
電動車いすの検討事項を詳しく検討すると…
- バックレスト(前後に傾けられるもの)
- 座面の幅
- アームレストの高さ、形状
- 車いすテーブル:支持性向上、体幹バランスの評価
- コントロールボックスの位置:操作筋力、片手・両手での操作評価
- クッションの種類(臀部の痛み、除圧)
- ベルト(例:強度の脊柱前弯にはコルセット型安全ベルトの使用)
- etc
日常生活動作(ADL)
- 徐々に低下していき、最終的には全介助レベル
- 一度低下・失われた能力は改善困難
- 自立度の高い順として、①食事 ②整容 ③更衣 ④排泄 ⑤入浴
- 更衣動作は車いす乗車可能な時期と不可能な時期とで差が出る
尻這い動作が可能かどうかが更衣動作に影響を与えます。
ADL動作のポイント①
- できる・できないではなく、行為に要する時間や代償動作、介助の必要性を検討していきます。
座位・臥位を安定させ、各ADL動作の場面に適した上肢の肢位を確保していきます!
ADL動作のポイント②
上肢の肢位を確保する上で、体幹の前傾姿勢が重要になります。
- 目と手の関係性
- 上肢が使用しやすくなる(肩関節内転位、身体の前面に位置する)
- 頭部が後方に倒れにくくなる
上肢は使用しやすい位置に半固定的に保持しましよう。
(アームサポート、アームレストの検討)
自助具・福祉用具
- 食事:個人用テーブル、回転式テーブル
- 整容:レバー式水道栓、光センサー式水道栓、長柄ブラシ
- 更衣:自力可能な時期はかぶり式、介助段階では前あき式(例:ボタン⇨マジックテープに変更)、ズボンはウエストがゴムで前ファスナー式
- 排泄:安楽尿器、補高便座、シャワーキャリー
- コミュニケーション:マイクロスイッチ・呼気式によるナースコール、環境制御装置 など
自助具・福祉用具の一例を挙げてみました。
在宅生活
- 出入り口:スロープは困難なことが多い、段差解消機の方が有用
- トイレ:便座を高めにする(立ち上がりやすくするため)、便座前方にスペースが必要(介助用)将来的にはリフト検討
- 浴室:浴室暖房(寒さ対策)を設置、シャワー口の位置検討、将来的には浴槽出入り時にリフト検討
室内温度・湿度管理を行い、呼吸器感染症に注意しましょう。
まとめ
今回は、筋ジストロフィー児への作業療法をテーマに書いていきました。
「こんなものを使わないとできなくなってしまった」「もう歩けなくなってしまった」など、当事者の苦悩や不安、ジレンマによって精神的な不安定につながりやすい場合があります。
自助具や福祉用具をそれぞれうまく・便利に使って、日常生活が豊かになるようなサポートをしていくことが必要です。