こんにちは。作業療法士Sです。
前回の記事では、脳性麻痺児の概論について書いていきました。
今回は、脳性麻痺児の食事指導について書いていこうと思います。
目次
脳性麻痺児の食事指導のポイント
食事指導
- 握りやつまみなどの手指機能や、スプーンなどの道具だけに着目するのは△
- 子どもの持つ摂食の潜在能力を最大限に引き出すように、反応を待ちながら誘導する
- 自発的な動きが出てくるように従って、誘導を軽減していく
- 全身の異常姿勢・運動パターンを抑制していく
作業療法士S
誘導の際、過介助にならないように注意しましょう!
食事の姿勢
食事姿勢は主に2パターンあります。
食事姿勢
- 抱っこ
- 姿勢保持装具
作業療法士S
この際、坐骨結節支持になるように意識しましょう!
坐骨結節支持によって
頸部・頭部の同時収縮+口唇・舌の動きが良好になる
抱っこ
子どもの姿勢
- 体幹が対称的になるように支える
- 後頸部の反り返りを防ぐ(肩甲帯を後方から支持する)
- 下顎を支持する
- 股関節は屈曲位にする
作業療法士S
胡座座位で、側方から抱え込むイメージです。
姿勢保持装具
CHECK
- ヘッドレスト
- クッション
- 傾斜:誤嚥対策
- 下顎の台
- 椅子:ベルト(体幹・骨盤の安定)
作業療法士S
正面もしくは前側方から誘導していきます。
下顎コントロール
下顎コントロールの方法は2種類あります。
下顎コントロール
- 後方や側方から子どもの下顎コントロール
- 正面から子どもの下顎コントロール
後方や側方から子どもの下顎コントロールのポイント
作業療法士S
作業療法士は、片腕を子どもの肩から回し、子どもの頭部を作業療法士の胸部と上腕、前腕で安定させます!
POINT
- 母指、中指、示指を子どもの下顎に置く
- 中指:舌根部のすぐ下につけ、圧を加える(口の閉じを促す、嚥下を促す、下顎が大きく開け後退を防ぐ)
- 母指:頭部の安定、下顎の側方偏位の防止
正面から子どもの下顎コントロールのポイント
作業療法士S
作業療法士は、中指を舌根部のすぐ下につけ、下顎が開きすぎないようにコントロールします!
ヘッドレストなど、子どもの後頭部を安定させる支えがない時には使えない介助法です。
POINT
- 示指:側方に当てて下顎が非対称にならない様にコントロールする
- 母指:指腹を下唇のすぐ下に当てて、下顎の閉鎖を促すとともに、頭部を適切な位置に安定させる
口腔周辺の感覚過敏
POINT
- 口腔内・口輪筋など知覚過敏を示す部位の過敏性を直接低下させる方法とともに、姿勢反応の促通なども有効
- 他の身体部位の過敏性も確認する
- 口腔反射の亢進、身体ののけ反り、緊張性の原始反射とともに出現することが多い
食事
食事の際の姿勢として、前屈し猫背のような姿勢は△です。カットアウトテーブルや、体幹ベルトの使用も検討しましょう。
次に、スプーン・コップの指導について、行っている点を書いていきます。
スプーンの指導
POINT
- スプーンは小さめのものを用い、スプーンの尖端に少なめにのせる
- 子どもの正面で注視させ、食べ物を認識してもらう
- ゆっくり口元に近づける
- スプーンを舌の尖端にのせ、スプーンを下方に少し押しながら上唇が閉じるのを待つ
- 嚥下を確認してから、次のスプーンを運ぶ
- スプーンの素材を検討する(木製・シリコンなど)
- その他の食具を検討する(スプーンホルダー、ノンスリップシート、フードガードなど)
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コップの指導
POINT
- 下顎のコントロールが重要
- コップを下唇におき、水分表面が上唇に触れるまで傾ける
- 上唇での水分の取り込みを確認する
- 口唇をしっかり閉じてから嚥下してもらう
- 柔らかいプラスチック製のコップ、鼻が当たらない様に半月にカットしたコップを使う(後屈、誤嚥防止)
作業療法士S
コップを歯の上に乗せないようにしましょう!
(咬反射や舌の突出を避けるため)
まとめ
今回は、脳性麻痺児の食事指導について書きました。
手指機能や食具だけに着目するのではなく、姿勢も重要なポイントです。上肢の操作はリラックスした座位姿勢で発揮されるためです。
姿勢コントロールと座位での上肢分離運動を促通するような食事以外のプログラムも検討していきましょう。
誘導に関しては、過介助にならないよう、児の反応を待ちながら誘導することも大切です。