こんにちは。作業療法士Sです。
今回は、脳性麻痺児の概論を書いていこうと思います。
評価・治療するにあたって
発達障がいへの支援はクライエント中心の実践が原則だと考えています。
評価・治療を行なっていく上で、以下のことを意識しながら行なっています。
- 観察をする
- 動作分析をする
- 暦年齢と発達段階を評価する
- 類型別の原則をどう当てはめるか
- 対象児の「できる部分」を拡大する
笑顔で楽しい雰囲気を作りながら、一方で冷静に評価し次のシナリオ作り(作業療法展開)を考え続けられるよう、心がけています。
観察のポイント
- 暦年齢の正常児をイメージする
- 対象児と正常児との違いを列挙する
- 全体を分割してみてみる(上下、左右、前後)
- 体の部位に着目する(頭部、上部体幹・上肢、下部体幹・下肢)
- 部位同士の関係性に着目する(頭部と上肢、体幹と上肢、体幹と下肢)
- 姿位による観察を行う(臥位、四つ這い、座位、立位、歩行)
●臥位:腹臥位、背臥位、横臥位(側臥位)
●座位:割座、胡座、長座位、端座位
「様々な姿勢が取れるかどうか」が1つのポイントになります。
脳性麻痺児
脳性麻痺児の場合を考えていきます。
観察上の留意点
- 筋緊張の変化を観察する
- 脳性麻痺の類型と関連づける
- 姿勢を観察する
- 「できること」「できないこと」を列挙する
脳性麻痺 型の区別
姿勢コントロールや心理的要因によって、筋緊張の変化がみられるため、注意が必要です。
動作分析上の留意点
- 動作分析は真似をすることから始める
- 日常で観察される姿位:支援(徒手・機材・環境)を受けずにしていること、受けてしていること
- 暦年齢と一致している項目(問題の少ない部分)
- 動作拡大を阻害している項目(問題の多い部分)
- 対象児の性格:好きな遊び など
真似をすることで、典型的な麻痺の姿を思い浮かべることができるようになります。
類型別の介入原則
- 類型の持つ障がいの特性を優先する
- 対象児の知的発達は介入に大きく影響する
- 対象児の生活環境、家庭環境、養育者を考慮する
- 類型別の原則は、対象児の個別因子と複合して考える
障がい特性を知る上で、先ほどの表に加えてこちら
(脳性まひについて)もご覧いただくと良いかと思います!
痙直型片麻痺の特徴
- 非対称な感覚運動体験
- 連合反応
- 固執・多動傾向
- ADL自立度が高い
- 知覚障がい
麻痺側上下肢の動きが少なく、手の注視が非麻痺側に偏り、麻痺側を無視する傾向があります。
リーチ動作も非麻痺側から行うことや寝返りの左右差、抗重力伸展活動の左右差、麻痺側上肢の正中位指向の欠如などがみられます。
痙直型両麻痺の特徴
- 体幹の低緊張
- 頭部、上肢での代償的活動
- 知覚障がい
- 視覚・眼球運動障がい
多くの児は、上肢で代償して発達していきます。
骨盤帯の運動性低下、尖足傾向もみられます。
痙直型四肢麻痺の特徴
- 痙性(Spastic)
- 連合反応
- 運動性が乏しい
- 一部分を使うと、全身に痙性が生じる
- バランス反応の欠如
知的障がいよりも運動障がいが強く、課題となることが多いです。
筋緊張亢進、環境、心理的条件など様々な条件によって、近位部に強く痙性が生じることがあります。
アテトーゼ型の特徴
- 筋緊張の動揺
- 安定性が乏しい
- 段階的運動困難
- 非対称的姿勢
治療原則は、ADL場面での安定性と対称性の獲得です。
●安定性:動揺に対して固定せずに、範囲を狭める、方向を修正するなど、意図的な活動の中でより安定性を強調していきます。
●対称性:児自ら動き、対称的に回復できる調整能力を高め、段階的にコントロールできるよう介入していきます。
失調型
- 低緊張
- 運動・静的失調
- 未熟性(減捻性立ち直り反応が優位)
- 動作が緩慢
運動失調(Ataxia)児は、小さいときは低緊張で、自発的な運動が少ないです。失調は運動や姿勢が広がっていく時に明らかになることがあります。抗重力姿勢が取りにくく、各姿勢が可能になっても姿勢変換が困難な場合があります。
発達は遅れることがありますが、異常パターンは少ないです。
まとめ
今回は、脳性麻痺児の概論を書きました。
観察や動作分析を通し、児が「できること」と「できないこと」、なにが問題になっているのかを評価し、治療介入の立案をしていきましょう。
「できそうでできないこと」「できなさそうでできること」はなにか見つけていくと、介入のヒントを得られやすいかもしれません。
次回は、脳性麻痺児の食事に関して書いていこうかと考えています。