こんにちは。作業療法士Sです。
車いすの介助方法 ①・②では、車いすの介助方法・リスク管理の一環として車いすの転倒しやすい場面などを紹介してきました。
今回は、車いすの乗り移り(移乗動作)の時に気をつけているポイントを書いていこうと思います。
実際の介助をする前に…
首や腰は捻るとよく動きます。
よく動くということは、言い換えると頸部と腰部はトラブルが起きやすい場所ということになります。
患者様だけでなく、介助者がぎっくり腰等にならないよう気をつける必要があります。
持ち上げる時の基本姿勢の確認
- 下肢の力を使いましょう(床近くまで腰を落として、蹲踞の姿勢)
- 腰を捻らないようにしましょう
- 自分自身にしっかり近づけましょう(対象物との距離はなるべく近くに)
- 支持面を広げましょう(両足の間隔を広くとる)
腰痛予防に
- 腹圧(コアスタビリティー)を高めましょう
一般的には、お腹周りの筋肉を鍛える、腰痛対策ベルトを使用するなどが挙げられます。
- 多裂筋
- 腹横筋
- 内腹斜筋の一部
- 横隔膜
- 骨盤底筋群
私が移乗動作介助する時に意識しているのはドローイン(お腹を凹ませる)と肛門を閉める(お尻の穴を引き上げるように力を入れます)ことです。
筋トレが苦手な私ですが、今のところ腰痛知らずです。
実際にやってみる時のポイント
今回は移乗介助方法として、Quad Pivot Transfers:クワドピポットトランスファーを例に挙げていきます。
クワドピポットトランスファーとは、患者様の両下肢に荷重を乗せて臀部をあげ、また下肢を軸に方向を変えて(ピポットターンをするように)移乗する方法です。
下肢の麻痺が重度で全介助で移乗する場合、下肢の支持性が低い患者様の立位を介助する場合で用いることができます。
両下肢に荷重を乗せて臀部をあげる際、介助者が持ち上げようとすると大変なので、重さのつり合いを利用することが大切です。
膝の固定(支点)
クアドピポットトランスファーでは、患者様の膝を固定しないと、患者様の膝が前方へ崩れていきます。
崩さないように動作中は常に固定しておく必要があります。
イメージとしては、介助者の膝の皿(膝蓋骨)で患者様の膝を臍の方向へ押し込んでいきます。押す位置は膝蓋腱の外側の窪みの辺りです。
組み方
介助者は患者様の脇にもぐりこみ、もぐった側の手は患者様の臀部に、反対側の手は上部胸郭に当てます。
患者様と介助者の胸を合わせるように患者様の胸郭を引き寄せます。(患者様の体幹がまっすぐになるように、介助者が若干体を傾けます。)
重さのつり合い
介助者は、膝を固定し、組んだら臀部を後ろ後方へ下げていきます。(患者様の立ち上がり誘導をするイメージです。)
患者様と介助者の臀部の重さがつりあがると、患者様の臀部は上がっていきます。
(あくまで、介助者は手で持ち上げるのではなく、手は対象者と介助者の体をつなぐ役割程度に留めておいてください。)
(↓別法ですが、YouTubeに動画があったのでリンクを載せておきます。)
まとめ
今回は、車いすの乗り移り(移乗動作)の時に気をつけているポイントについて書いていきました。
“介助者の立ち位置等、誘導によっては患者様のパフォーマンスを阻害してしまうことがある。”と言われています。
慣れていない動作をむりやり頑張っても、介助者と患者様、お互いに辛い思いをしてしまいます…。
心地よい介助を目指して、少しでも役に立てたら幸いです。