こんにちは。作業療法士Sです。
前回に引き続き今回も発達分野、原始反射・反応について書いていこうと思います。
原始反射・反応
・出生後の新生児期に出現し、中枢神経系の発達とともにやがて消失する反射のこと
・乳幼児は自らの力で動くのが難しいので、原始反射に操られている(生きていくための力)
新生児きの途中から出現し、一生涯続くもの
反射が出現すべき月齢に観察されなかったり、
消失すべき月齢でも残存している場合には、
何らかの中枢性の障害が考えられます。
中枢系の成熟
中枢神経系の成熟は、尾部から頭部へという中胚葉勾配に従います。最も下位の脊髄・脳幹レベルから中脳レベル、皮質レベルへと発達します。
原始反射・反応を検査する意義とは?
中枢神経系の成熟度合いは、直接目で見ることはできません。
目に見える姿勢・運動と反射・反応の発達は、目に見えない中枢神経系の成熟を反映する。
Fiorentino(米)
- 我々が直接観察することができる子どもの姿勢や運動は、臥位や四つ這い位、座位、直立位へと発達する
- 姿勢反射・反応もそれぞれの姿勢・運動発達に対応し、原始反射、立ち直り反応、平衡反応へと発達する
つまり、目に見えない中枢神経系の成熟度合いを確認するために、原始反射・反応を検査します!
原始反射・反応の留意点
原始反射・反応の留意点として、以下のことを考えながら検査を行っています。
- 出現時期はいつか
- 誘発刺激をどこに入れるか
- 中枢レベルはどうか(脊髄レベル、中脳レベル、皮質レベル)
- 結果はどうか(陽性・陰性)
- 解釈をどのようにするか
原始反射(primitive reflex)
ここでは、臨床でよくみる7種類の原始反射を挙げます。
(他にも手掌把握反射や足底把握反射、バビンスキー反射、足踏み反射など様々なものがありますのでご確認ください)
- ルーティング反射
- 吸啜-嚥下反射
- モロー反射
- ガラント(ギャラン)反射
- 対称性緊張性頸反射(symmetrical tonic neck reflex:STNR)
- 非対称性緊張性頸反射(asymmetrical tonic neck reflex:ATNR)
- 緊張性迷路反射(tonic labyrinthine reflex:TLR)
- 中枢神経系の発達の指標となる
- 欠如 ⇨ 中枢性運動神経の障害
- 左右非対称 ⇨ 限局性の末梢神経運動障害を示唆する
- 持続 ⇨ 中枢性の運動神経の発達障害を意味する
ルーティング反射・吸啜-嚥下反射
これらは、食事に関与する原始反射です。これらが持続していると、以下の妨げになります。
- 随意的な吸う運動
- 正常な舌の運動
- 声(喃語)の生成
必要な時期にこれらが低下していると、
・食物を得る能力の低下
・口腔内感覚刺激の喪失
がみられることがあります。
モロー反射
- 2相からなる(第1相:上肢伸展・外転、手指外転 第2相:前胸部で上肢屈曲・内転)
- 出生時の屈曲傾向を変える役割
- 新生児の神経学的検査でよく利用される
ガラント(ギャラン)反射
【手技】
①児を腹臥位にする
②脊柱の外側約3cmのところを脊柱線に沿ってひっかく
【結果】
刺激された方向に体幹の屈曲を引き起こす
- 側わん症
- 自力での座位など体幹の対称的な安定性や頭部の運動の発達を遅らせる
3大姿勢反射
以下の3つの反射は姿勢に大きく影響します。
- 対称性緊張性頸反射(symmetrical tonic neck reflex:STNR)
- 非対称性緊張性頸反射(asymmetrical tonic neck reflex:ATNR)
- 緊張性迷路反射(tonic labyrinthine reflex:TLR)
対称性緊張性頸反射(symmetrical tonic neck reflex:STNR)
【手技】
①児を腹臥位水平にする
②乳児の頭を他動的に前屈させる(上向き)
③乳児の頭を他動的に後屈させる(下向き)
【結果】
②上肢が屈曲、下肢伸展する
③上肢が伸展、下肢屈曲
非対称性緊張性頸反射(asymmetrical tonic neck reflex:ATNR)
【手技】
①児を背臥位にする
②乳児の頭を他動的に回す
【結果】
顔の向いている側の上下肢が伸展し、反対側の上下肢が屈曲する
いわゆる“フェンシングポーズ”です!
緊張性迷路反射(tonic labyrinthine reflex:TLR)
・重力の方向と頭の位置関係で刺激される反射
・背臥位・腹臥位の2つのポジションでみていく必要がある
・背臥位:伸筋群が促通 腹臥位:屈筋群が促通
反応
次に反応をみていきます。
ここでは、以下の2種類について書いていきます。
- 立ち直り反応
- 平衡反応
立ち直り反応
動物が空間で異常姿勢に置かれた時などに頚部や体幹を正常な姿勢にもっていこうとする反応
Magnus
体の正常な立位姿勢をとるのを可能にし、臥位より座位、完全な立位姿勢までの変化の過程のバランスを保つようにする自動反応
Martin,1967
5つの立ち直り反応
- 視覚性立ち直り反応
- 迷路性頭の立ち直り反応
- 頭に作用する体の立ち直り反応
- 体に作用する頚の立ち直り反応
- 体に作用する体の立ち直り反応
頭部の制御
これらは分けるのは難しく、3つの反応の相互作用を調べていく必要があります。
補足)迷路性頭の立ち直り反応
- 前後・側方へ動く重力が迷路系に働き、その結果、頭の位置を変える頸部の筋に反応する
補足)ランドウ反応
視覚性立ち直り反応、迷路性頭の立ち直り反応、頭に作用する体の立ち直り反応の3つの反応を複合化した反応です。
ランドウ反応の意義は、以下のものが挙げられます。
- 屈曲姿位からの脱却
- 腹臥位において、頭部伸展の補助
ランドウ反応は、抗重力姿勢の準備です!
体に作用する頚・体の立ち直り反応
・頭の制御
・頭の動きの後、肩・胸郭が続き、体幹・骨盤が分節パターンで続く
・共に胸郭と骨盤の間で回旋が起きる
・丸太様の回旋にはならない
・体幹の制御
・一側の下肢を胸の方にあげ回旋、骨盤に続いて胸郭の動きを伴った回旋運動
平衡反応
- 体がその重心を維持、制御することのために用いる自動反応
- 皮質レベル
- 保護反応、傾斜反応、姿勢固定反応の3つの反応を複合化した反応
補足)保護伸展反応
- 体が崩れることを保護することを自動的可能にする
- 生涯維持する
保護伸展反応は座位との関連性があるため、要チェックです!
保護伸展反応は3種類あります。
- 前方保護伸展反応:6か月
- 側方保護伸展反応:7か月
- 後方保護伸展反応:9〜10か月
後方保護伸展反応が可能になると、座位も安定し、両上肢がフリーになります。座位で手遊びなども行っていきましょう!
補足)傾斜反応
- 支持面の不安定な状態で、身体の平衡を維持しようとする自動反応
- 検査をするためには、不安定な支持面が必要
- 背臥位・腹臥位・座位・立位それぞれ評価する
検査をするときは、傾斜台などを用意しましょう!
まとめ
今回は発達分野、原始反射・反応について書いていきました。
反射が出現するべき月齢に反射が観察されなかったり、消失すべき月例でも残存している場合には、何らかの中枢性の障がいがみられる場合があります。
そのため目に見える反射・反応の発達にて評価していくことは、中枢神経系の成熟を評価する上で有効です。
今回挙げた反射は一部にすぎないため、興味をもたれた方はこちら(表:姿勢反射の一覧)もご覧ください。