こんにちは。作業療法士Sです。
今朝、Twitterにて
病棟スタッフ「この人自宅退院は無理やろ。」
それを決めるのは患者さんの家族であって、病院のスタッフではない!
リハも看護師も介護士も
つべこべ言わず患者さんのADLを少しでも上げられるように試行錯誤しろ😡
やっさん@杖×転倒予防の研究に取り組む理学療法士さんより
という投稿をみました。
たしかに、退院先に関しては患者様ご本人とそのご家族が最終決定するものであって、医療・福祉職が決めて良いことではないと私も思います。
ではなぜ病棟スタッフが自宅退院は無理だと評価したのか、その原因を突き詰め介入していく必要があります。患者様への介入に加え、他にも作業療法士ができることはないかを考えさせられました。
そんな中、今回はある患者様(Aさん)を思い出したので、書いていこうと思います。
高次脳機能障がいは治るの?
ご家族から、こんな質問を受けました。
運動麻痺もなく、病棟内をすたすた歩くAさん。
見た目は以前と何も変わらないのに、前とは違うご本人に直面し、どう向き合えば良いのか困惑されるAさんのご家族がいました。
症例紹介
- 60代女性
- 脳血管障害
- 麻痺はないが、重度の高次脳機能障がい(見当識、注意、記憶の低下、作話など)を呈す
- Key person:夫
- 子ども2名(娘、息子独立)、面会は夫及び娘が交代で行っている
- 真面目
- 几帳面
- 熱心
- 妻の不可解な行動に疲労(表情険しく、余裕がない)
- 母の現状を受け入れており、接しかったは穏やかで上手
- 父にあまり意見はできない
入院時の様子
・見当識、記憶力の低下、作話による混乱あり
・常にイライラしたご様子
・ご本人を刺激しないよう対応(作話の対応が大変)
病棟でもトラブル頻回ありました
- 何時であっても無意識に外へ出ようとする
- 調理時、どこに何があるかわからない(道具・調味料)、火の消し忘れあり
- 不要なものを大量に買おうとし、制止しても聞いてもらえない(買い物)
関わりの中でみえたこと
- 言っていることは支離滅裂だが、Aさんは真剣。正そうとすると作話の連続が始まる
- 「不安なこと」に対して、スタッフが手助けとなる何らかの行動を起こすと、安心され、落ち着くことが多い
- 脳疲労している時は、注意や記憶の混乱が生じ、情報が正しく入力されにくくなる
Aさん・ご家族の想い
・「全てを否定される」
・誰にもわかってもらえない
・悲しい
・理解しているつもりであったが、できなくなったことが多く、悲しい
共通して、「悲しい」想いがありました
否定せずに、
Aさんの生きている世界に共感してみる
なぜそのような現象が起きているのか、分析していく
困りごとへの対処方法を探る
- 何時であっても無意識に外へ出ようとする
- 調理時、どこに何があるかわからない(道具・調味料)、火の消し忘れあり
- 不要なものを大量に買おうとし、制止しても聞いてもらえない(買い物)
これらの症状に対し、以下の対応をしました
①外出の準備を手伝う、電話をかける
②情報量の制限:おかずを一品減らす、間違えても否定しない
③一旦カートに入れ、他の物を探している最中に不要な物を元に戻す(Aさんは気づかず)
夫はAさんが調理をする時、消火器を持って見守っていたらしいです…!
お互いが傷つかずに、その時の困りごとをやり過ごすことができる「何か」を探る
まとめ
患者様への介入に加え、他にも作業療法士ができることはないかという点で、ご家族への支援を中心に行った例を挙げてみました。
高次脳機能障がいの回復が年単位であるように、1番の支援者であるご家族が1番の理解者になるまでも時間を要します。
家族だからどう思っているのか理解できるわけではなく、家族だからこそ思いを受けれ入れることが困難なこともあると思います。
実際の生活の中で、高次脳機能障がいがどのような形となって現れているのかは臨床場面だけではわからないことが多々あります。外泊は良いヒントを与えてくれるかもしれません。
スタッフは生活場面の困りごとに対するご家族が感じる不安を受け止め、関わりの中で得られたヒントをご家族にお伝えし、不安を軽減することができるように図っていきます。
退院後を見据え、ご本人だけでなくそのご家族も巻き混みながらの介入をしていく必要があるかもしれません。